君は山田裕貴という俳優を知っているか

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窪田正孝菅田将暉福士蒼汰高橋一生・岩田剛典・村上虹郎佐藤健などのイケメン俳優の引き立て役を年間10本以上やっている俳優を知っているだろうか。

 それは、山田裕貴という。

山田は海賊戦隊ゴーカイジャー(ゴーカイブルー役)でデビューし、今年は年10本以上の作品に出演している俳優である。

そんな彼の、ここ1年のフィルモグラフィーを観ていただきたい。

デメキン 敵の不良にボコられる親友役
亜人 快楽殺人鬼の小悪党
あゝ、荒野 主人公の咬ませ犬
伊藤くんAtoE 女に弄ばれるダメ男(ドラマ版にしか出ない)
HiGH&LOW 鬼邪高の番長(元々は咬ませ犬だった)
闇金ドッグス 闇金会社の社長
二度目の夏、二度とあえない君 ラノベ主人公の友人
僕たちがやりました 小悪党のチンピラ
トモダチゲーム 主人公を陥れたりキスしたりするゲームの参加者
破裏拳ポリマー 咬ませ犬の刑事
おんな城主直虎 1話だけ出てくる若侍
3人のパパ 浮気しているサラリーマン
ガキ☆ロック ドラマオリジナルキャラのラスボス
キャバすか学園 婚約者がいるのにキャバに通う客

何をどうやったらここまでカルマが積めるのかと思うほどに、小悪党・クズ・ヘタレが多い。

キラキラ映画のメインイケメンのように壁ドンしたりキスしたりするよりも、主人公を殴ったり女を泣かせたりする方が圧倒的に多い。

世間一般が思うような「カッコいい」役はあまりないのである。

何故年間10本以上主人公を苦しめたり無様にやられて引き立てたりするような俳優の記事を書くのか。

それは、山田裕貴が日本の映画界において奇特な地位を築き上げていることに気づいてしまったからだ。

山田裕貴は特撮出身である。すっかり若手俳優のエリートコースとなっているニチアサ俳優だが、どこで間違えたのか山田にイケメン役は振られなくなっていく。

初主演映画の「ライヴ」では危険なデスゲームに挑むクズ、特撮OBによる「俺たち賞金稼ぎ団」では主人公を陥れて返り討ちに遭う悪党、実質Vシネの「ガチバン」では無名時代の窪田正孝に喧嘩をふっかけるチンピラと、ワルの役を次々とこなしていった。

そんな悪の才能を開花させ、今の路線を決定づけたのが「闇金ドッグス」と「HiGH&LOW」だろう。

窪田正孝が有名になりすぎたので本編が作れなくなったガチバンのスピンオフである闇金ドッグスでは、債務者を地獄の果てまで追いかけて暴力を振るって金を返させる闇金会社の社長を演じた。

そして、ハイローでは狂気的側面を見せる鬼邪高校の番長を怪演。当初はコブラにボコられる咬ませ犬としての登場であったが、予想外の人気からメインキャラの一角に食い込んでいった。

もう一つ、山田を語るうえで欠かせないのはキラキラ映画の当て馬役である。

ストロボ・エッジ」「となりの怪物くん」「イタズラなKiss」などでヒロインに絶対叶わない恋愛感情を寄せ、メインイケメンに敗れ去っていく姿は哀切を感じさせる。

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いわゆる“当て馬”的なポジションですし、正直、従来の『イタキス』ファンの方は、金ちゃんなんかどうでもいいんじゃないかな、むしろ邪魔なんじゃないかなって思って(笑)。でも、僕は金ちゃんを、ただの金ちゃんというキャラクターにはしたくなかった。

中でもストロボ・エッジでは役者としての知名度が低かったこともあり、出演が決定した途端大炎上。しかし山田は巻き起こる批判にむしろ対抗心を燃やし、映画では主役を食うほどの勢いで見事な当て馬を演じきった。

www.cinemacafe.net

僕の役は蒼汰と架純ちゃんを奪い合う役柄でした。僕は当時、2人と比べて役者として世間の皆さんの認知度も低く、自分で自分の名前を検索すると『誰こいつ』と僕の出演に対して賛否の否しかありませんでした。日本中の女子高生が敵になった気分で、もう悔しくて、悔しくて…。でも、それが自分の役者魂に火をつけたんです

若手俳優のイメージとしてよく挙げられる「王子様」からはほど遠く、禍々しく惨めな役ばかり演じる山田裕貴は、たとえ数秒間画面の片隅に映っているだけであっても独特の存在感を放っている。

怪演俳優、という言葉がふさわしいだろう。

山田が怪演俳優たる理由としては、役を「生きる」ことへの姿勢があげられる。

とみに「知名度が低い」ということに対する負けん気は物凄い。

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すごくリスペクトしているけど、負けたくない。「窪田さんを今ひっくり返せるのは、誰だ? 俺がやってやる」みたいな気持ちで臨んでいた部分はあります。

数多くの人気俳優の引き立て役をやるなかで山田は自身の知名度が低いということを自覚しており、時にはそれすらも武器にしてしまう。

ガチバンユニバースにおいては、当初窪田の敵役だったのがシリーズ準レギュラー化し、スピンオフ作である闇金ドッグスが作られるに至った。

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うちのチームだけシーズン1はLDHさんが一人もいないし、最初に負けるチームだったので、「なんか悔しいな。咬ませ犬じゃん!」みたいなことを思っていたんです。三人とも俳優人生をエキストラからスタートさせているということもあって、そういう雑草魂のようなところから、「じゃあ、やってやろうぜ!」と、いい方向に向かっていったんだと思います。

引き立て役としてマイナー俳優ばかりが集められた鬼邪高では「ひとかどの咬ませ犬で終わりたくない」という想いから、当初S1でフェードアウトする予定がスピンオフまで決定してしまった。

「役を演じるのではなく、生きる」芝居に対する熱い想いを語る。映画『闇金ドッグス6』山田裕貴インタビュー | iLIP【イケメン×エンタメ情報満載】

ダメだったのは自分のせいで、良かったのはみんなと僕のおかげ。結局、良いことも悪いことも全部自分のせいにするようにしています。だからこそ、人一倍考えるし、疑い深いし、計算もします。でも、その計算が間違っていることもあります。それは、1つ1ついろんな監督と出会い解決してきました。だから、「一度、やってみる・役を生きてみる」ようにしています。

 

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出番が少なかったぶん、どういう風に爪痕を残すか、ということを意識しました。村山(編注:『HiGH&LOW』の山田の役)で印象的って言っていただいている「あっかんべー」という仕草も台本にあると思われていたんですが、アドリブなんです。そういう部分は結構いっぱいあります。

山田の演技の魅力には、役に対する深い考察とアドリブもある。山田はどんな脇役であっても、その人物のバックボーンや思想を考察し、計算し、演技に盛り込む。そういうところが現場で話題になる豊富なアドリブに繋がっているのだと思う。

ハイローに関してはかなりアドリブが盛り込まれており、「編集でカットされない部分を計算して入れた」という逸話まで残っている。

 

 山田自身は、暗い役の方が似合っていると語っている。

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他の映画やドラマでは明るい役を演じることが多くて、でも、このシリーズで忠臣を演ると、(あ、こっちが本当の俺なんじゃないか)っていう感覚がすごくあります。明るい役を演じるときの自分って、すごくがんばってやってたんだな、って思うし、そっちのほうが「作ってる」感じです。

もともと、振り切った演技が好きだったんですけど、このシリーズでは山田裕貴のままでいることに振り切っています。

悪役や当て馬など人の苦しみや悲しみ、怒りといった負の側面を表現する役柄に定評があるのはそのためだろうか。

そんなこともあってか雑誌では人気若手俳優というくくりではなく癖の強い脇役俳優として紹介され、山田も「主演より脇役の方が好き」と語っている。

かといって主演だからといって慢心しないのは、主演舞台「宮本武蔵」が読売演劇大賞優秀賞を受賞したことからも分かるだろう。

 

山田裕貴が、引き立て役をやっている俳優ほどに売れるのかどうかはわからない。

「万年ネクストブレイク俳優」と呼ばれているので、派手な活躍は見込めないかもしれない。

それでも、悪役と当て馬とクズを演じ続ける奇特な俳優がいるということは覚えておきたい。

唯一無二の才能であることは間違いないのだから。