息もつかせぬ絶叫暴走特急「釜山行き」

f:id:nyapoona:20170905181225j:plain

釜山行きこと新感染を観ました。

 

昨年の本土公開からホラーマニアの間で話題になっていた韓国のゾンビ映画がついに日本上陸。

ミニシアター系作品としてはベイビー・ドライバー並みの話題を呼び、初日から映画マニアが押し寄せて満席になる劇場も多いとのこと。

韓国のゾンビ映画といえばあの「コクソン」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

それで、観てきました。

結論から言うと、どえらい映画なのでゾンビ映画好きもゾンビ映画初心者も絶対に観ましょう。

ゾンビ映画(というか宗教映画)の飛び道具的なコクソンとは対照的に、大量に押し寄せるゾンビ!無能な人間!人類終了!のゾンビ映画の王道を往く作品に仕上がっております。

ホラー映画にありがちなゾンビ登場までのかったるさがなくて、普通のホラー映画のクライマックスがずっと続くようなマッドマックス的展開。

地獄絵図となった韓国を疾走する特急を舞台に、狭い車内を溢れんばかりのゾンビが駆けずり回る、そんな中をどうやってサバイバルしていくか?というのが電車のようにハイスピードな展開で描かれていくのだ。

何故ゾンビが出てきたのかという背景解説を省略していきなり電車!ゾンビ!ゾンビの群れ!をお出ししてくるのがポイント高いですね。

しかしゾンビがどのようにして広がっているのか、列車の外で何が起こっているのか、ということが電話やテレビを通じて自然と分かるようになっているのがニクい演出。

ゾンビそのものに対する恐ろしさはあまりなく、見た目よりもエグいシーンも少なめ。

けれどゾンビ禍の中自分だけが生き残ろうとする人々のエゴ、極限状態にあっても助け合う人々の善性をまっすぐに描きだすのが心に響く。

他人を見捨て殺してまで生き残ろうとする者への因果、人を信じられなかった者に差し伸べられる手、そういったものが、ベタだけど、しっかりと表現されている。

ゾンビ映画としてはベタなほどにベタな作品ではあるが、その一方で大統領選のポイントとなった韓国の格差社会をエッセンスに取り入れている。

釜山行きの主人公は金融投資家であり、過酷な韓国の格差社会のいわば勝ち組だ。

他人を押しのけ、欺いてまで手に入れた勝ち組の地位だから、当然それ以外の者からは恨まれる。

そういうことは承知なのか、主人公も他者への傲慢な態度を全開にしている。

でもゾンビは個人の地位などどうでもよく、とにかく本能にしたがって、平等に人を食らう。

勝ち組の地位が意味を失っていく中、主人公は地位も生まれも年齢も違う他者と協力していくというのが物語のポイントとなってくるのだ。

勝ち組であろうが負け組であろうがとにかく人を食べるゾンビは、見えない経済的階級に束縛された現実の韓国社会の隙間から産まれいでた怪物であるようにも思える。

政府が「事態は沈静化する」と言っておきながらまったく沈静化してないシーンとか乗務員を脅して車両を封鎖し生き延びようとするファーストクラスの乗客をゾンビが食い散らかすシーンとかはモロだよね……。

現実にゾンビが出てくるかといえば、まず出てこないだろう。

でも、どこかで誰かがボタンを掛け違えれば、国が地獄に陥り政府やメディアさえも信用できない状況にたやすく陥るかもしれない。

そんな中にあって、誰かが誰かの手を差し伸べること。

それがゾンビにならないための特効薬なのだ。