HiGH&LOW THE MOVIE2 END OF SKY

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夏の奇祭ことハイロー2を観てきました。

 まずHiGH&LOWとはどういうコンテンツか、ということを紹介しておくと、EXILE主導のTVドラマシリーズであり、THE MOVIEはその劇場版である。

日本のドラマでありながら異様な映像美と異様なアクション、独特すぎる世界観がマニアを魅了しカルト的な人気を得た。

ハイローに出会ったのは去年の夏で、その暴力的なアクション映像の津波はガツンと脳に衝撃を与えた。

その1年後に、満を持しての2である。

あまりにも豪華な1を見せられた後で、その高いハードルを越えられたのか……という不安もあり、前日とか気が気でなかったほどだった。

 

今回のおはなしだが、

悪の軍団ダウトのリーダー蘭丸とサンキングス刑務所のジェシーが悪の軍団九龍グループに釈放され、ホワイトラスカルズに攻め入って来たぞ!SWORD軍団はダウトの魔の手からSWORD地区のみんなを守れるのか!?

一方、琥珀さん・九十九・雨宮兄弟はひみつのUSBをバラそうとするが、それを邪魔する黒崎会の若頭・源治が攻めてきた!

悪の軍団九龍グループに立ち向かえ!いけ!ぼくらのSWORD軍団!

そういう感じの話になっております。

THE MOVIEおよびREDRAINの直接的な続編にあたるので、この2作を観ておくとよいが、1に引き続き立木ナレのインターミッションがあるので大丈夫です。

LDHが自らの芸風を完全理解して昇華させてきた、というのが率直な感想で、つまりとても面白かったです!ありがとうLDH!!!!!!!

前述のとおり、ストーリーが

・SWORDvsダウト

・雨宮兄弟と琥珀九十九vs源治

・それらを裏で操る九龍グループ

の3つが平行して進む形で入り組んでいるのですが、それでもテンポが良く理解しやすい形になっている。

THE MOVIEとREDRAINの補完を行いつつも、キャラクターや世界観に深みを持たせるストーリー展開なのも流石。

これまでちらっと登場してきた羅千地区やリトルアジア地区にもフォーカスがあたり、それらがどのような土地なのかということを新キャラと絡めて紹介していくつくり。

羅千刑務所とサンキングス刑務所という力強いワードがスパロボみたいなMAPで出てきたのには笑ったぞ!

あと語感を制作陣が気に入ったのか台詞中でリトルアジアを連発しまくってとどめに字幕が出てくるのもツボった。

キャラ同士の掛け合いも、お互いのキャラを深め合うようになっていて面白かった。

真っ先に挙げられるのが村山さんだろう。コブラの提案に唯一全面的に協力し、単身日向を説得しに向かう姿は1期の咬ませ犬っぷりがみじんもない成長ぶり。

日向も、村山さんや一見キャラが被っていそうな蘭丸との対峙が良かった。

細かなところではICEを見たときの関ちゃんのキレっぷりもかわいかったぞ。

今回は「九龍の再開発計画は悪いことなのか?」という疑問から山王連合会が分裂するという衝撃の展開になる。

「どうせハイローのことだから言うて最後には援軍に来るだろ」と思いきや最後まで全く来ない。どうなってしまうのか?その答えを得るには数か月後の次回作を待たねばならない。

新キャラも、既出のキャラに負けないほどの魅力を放っている。

まずは話の中心になるメインヴィランの蘭丸だろう。

日向と似たような戦闘狂でありながら、ナイフでめった刺しにしたりビール瓶を武器に使ったり鎖で首を絞めたりする韓国暴力映画みたいな残虐ファイトっぷりと仲間にすら容赦ない悪党ぶりが強烈だった。

もう一人のメインヴィランである源治も――というかこれが一番ヤバかったですね。コクソンの國村隼を彷彿とさせられる演技がとにかく怖い!不気味!こいつだけホラー映画からやってきたみたいな恐ろしさ!

サンキングス刑務所のジェシーは、その鍛え上げられた肉体を惜しげもなく披露して変態アクションを繰り広げるのがすごかった。本当にこの人30代なのかよ!?バキバキマッチョボディでの殴り合いはもちろんのこと、靴の踵を潰すか潰さないかで本気度を表現する細かな演技も素晴らしい。

SWORD側の新規キャラははっきりとした見せ場はないものの、ハイロー入りを世界一熱望されていた佐野岳演じるユウの完全にルードボーイズに馴染んだ動き、リーゼントのやべーやつである岩永ジョーイの回転アクションが光っていた。この2人の戦いはもっと観ていたかったですね。

そして、九龍グループのおじさま方。渋いとかそういう次元を通り越して、ただただ凄みのある方々ばかり。特に高嶋政伸の顔芸とサイコパスな悪党ぶりは必見である。

 アクションシーンは凄かった前作を余裕で越えていく凄さで、迫力も濃度も満点。見どころがありすぎてヘトヘトになるほど。

出だしからいきなりとんでもないアクションシーンがありますからね。あまりにも凄すぎて口をアングリさせてしまった。

忘れちゃいけないのは中盤のカーチェイスシーン。「カーチェイスとは……?」というカーチェイス概念を大きく覆させられる車飛びまくりのチェイスシーンはカッコいいとかすごいとかを通り越してただただ頭がおかしい。ハリウッドでもあんなもん滅多に撮らねーよ!

この他にも源治の不気味な剣戟アクション、車止め、村山の鬼邪高ありがとう階段キック、ブラウンのぐるぐる回りすぎてよくわからないナイフアクション、当たり前のように壁を走るルードボーイズ、コブラジェシーの寝技合戦など脳に良すぎる映像が流れまくってそれはもうただただ驚くしかなった。

それと特筆すべきはビジュアル・構図の美しさ。

輩が行きかう賭場から悪の秘密結社の本部にしか思えないヤクザの集会所までそりゃあもうため息が出るほど美しい背景の下、宗教画のような象徴的でバシッと決まった構図が出てくるのですよ。九龍のトップの出迎えシーンで、画面両端にシンメトリーに並ぶヤクザ集団の一糸乱れぬ礼なんかもう「はあああああ……」という気分にさせられた。

今回はストーリーをいちいち口で説明せず、こういう構図や仕草や歌で理解させていく手法が採られているので、ダメな映画金曜ロードショーてめーのことだよでよくありがちな「設定をそのまま突然口に出させる」というのが控えめでテンポが良かった。

 

 不満点としては、まずORDの扱いが悪いところですね。

いや要所要所できちっと見せ場はあるんですが、もっと入れてほしかったなと。

ノボル・ヤマトがダウト・プリズンギャングの幹部戦が用意されているのに対して、日向・村山・タケシは雑魚散らしに徹していて、こいつらのネームドボス戦を見たいんだよ!!という気持ちは強かった。

 あとオタクの間で激しい感想戦が繰り広げられているコブラとダンの対立ですね。

 街を守ろうとするために九龍グループへ戦いを挑もうとするコブラと、戦うことが自分たちの街を守ることに繋がっていないのではないかと主張するダン・チハル・テッツの対立は観ていてつらかった。

自分としてはコブラの視点は巨視的すぎるかな、と。このままだと銭湯が潰れてしまう、と言うテッツに「もっと頑張ったのか」とコブラは言うんですけど、「もっと頑張れ」を反論に使われると居場所のなくなる、追い詰められてしまう人間はいるんですよね。

この辺りはザムの琥珀さんの再演になっているというか、これまでコブラの主人公の無謬性を描いてきたのにいきなり「そうではないのでは?」というのを突きつけられたような衝撃があった。

なんだかんだでDTCは戻ってくるだろうけれど、どこかでコブラの主張が覆される展開は3ではあるんだろうな……。

 

キャッチコピーの「さらばSWORD」の意味が観た後でもちょっと分からなかったんだけれど、EOSについて脚本家が「SWORDの青春の終わり」を描いていると言っていて、「SWORD地区のメンバーが子供から大人になっていく」ことを「さらば」とかけているのではないかと思った。

今回SWORDの「子供の価値観」と九龍グループの「大人の価値観」の対立が鮮明に描かれており、邪悪な大人の力によってSWORD地区が蹂躙されて終わる。

ザムの頃からいろいろとウテナ的だと思っていたが、今回も「邪悪な大人との戦い」という側面でウテナというか幾原邦彦とか虚淵玄と共鳴する部分があると感じた。

今回コブラが下した決断によって、SWORDは大人の価値観との戦いに巻き込まれていく。もう戻れない。戻れないことを分かっているから、子供の価値観という土俵でしか戦えないダウトは一目散に逃げたのだと思う。

その結果が、スタッフロール中で描かれるようなものであっても、SWORDはなお戦い続ける。戦い続けなければならない。本当の世界には絶望が満ち溢れているのだと分かってしまっても。

この物語は、英雄叙事詩なのだから。