キラキラ映画考

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キラキラ映画というジャンルがある。

 

これは大まかにいえば「ティーン向けの主に恋愛を取り扱った邦画」というものである。

このジャンルに分類される映画は主に

・少女漫画原作映画

ライト文芸原作映画

などがある。

しかし少女漫画原作映画でも『ちはやふる』や『溺れるナイフ』はキラキラ映画から切断処理されることもあり、また少女漫画・ライト文芸原作ではない『チア☆ダン』やボーイズラブ原作の『ダブルミンツ』がキラキラ映画として扱われることもあり、その定義は定かではない。

こうしたキラキラ映画については以下の特徴を持つとされている。

・中高生の恋愛

・ソフトフォーカスや「キラキラ」としたエフェクトを多用する

・壁ドンや甘いセリフなどロマンティックなシーンがウリとされ、そういったシーンが連続する

・メインヒロイン、メインヒーロー、当て馬、友人というキャスト配置

・メインヒロインは若手女優が演じることが多い。アイドルが演じることは少ない。

・メインヒーローはジャニーズの若手や特撮番組の主人公経験者が演じることが多い。

・当て馬や友人は、メインヒーロー・メインヒロインより知名度の劣る若手俳優が演じることが多い。

・以上の特徴を伝統芸能のように厳守するといわれている

これ以外にも様々な特徴が指摘されている。

共通するものとしては「若年の女性層に向けた映画」ということになるだろうか。

詳しくはキネマ旬報の2017年1月下旬号や映画秘宝ムック『漫画+映画!』がこのキラキラ映画を取り上げているので、興味のある方は是非一読いただきたい。(『漫画+映画!』では「スイーツ映画」として書かれている)

若年女性層に向けた映画であるがゆえに、キラキラ映画はしばしば批判される。どういう風に批判されているかはキネマ旬報のレビュー欄や柳下毅一郎の『日本映画めった切り』を読めばわかります。

そこに並ぶ文言には、「女性に媚びた」「中身がない」「ワンパターン」「胸やけがする」「バカみたい」というようなものがある。

ジャンル映画や文芸映画を愛好するシネフィルにとって、キラキラ映画とは異文化である。

お目当ての映画の予告編で流れてくるうざったいハエのような存在だと思っている人も多いかもしれない。

しかし、こういった専門家からバカにされ黙殺されているキラキラ映画を観察してみると、面白いことが分かってくる。

・量産されるが狭い世界

キラキラ映画には「量産品」というイメージが付きまとうが、実はその大多数が少数の監督で回っている。廣木隆一・三木孝浩らがその代表格である。キラキラ映画の「法則」とされるものの多くは、彼らが作り上げた作品ノウハウであったりする。

型にはめられたような作風だと言われているのは、少数の「専門監督」がハイペースで作っているというのが大きい。

・キャストと序列

監督も少数だが、キャストも幅広いわけではない。

土屋太鳳、有村架純広瀬すず菅田将暉福士蒼汰松坂桃李竹内涼真中川大志村上虹郎らがメインキャストを張ることが多い。

特にメインヒーローにおいては、特撮の主人公を経験している者が目立つ。

これは年単位のドラマの主演を務め上げて演技力と知名度が向上しているという点が評価されていることが影響している。

当て馬や友人役もまた、山田裕貴千葉雄大吉沢亮など特撮俳優が目立つ。

この場合、サブキャラはメインキャラより知名度の劣る若手俳優が選ばれることが多い。メインキャラが霞んでしまうのを防止するためだろう。

キラキラ映画の主軸はメインヒーローとメインヒロインの恋愛ドラマであって、それ以外は物語を引き立てる添え物として扱われる。

「誰でもできる」と揶揄されることもあるキラキラ映画だが、その舞台に立つに当たっては俳優としての経験がものをいう世界でもあるのだ。

・SFも流行っている

最近の流行りとして、タイムリープもののキラキラ映画がある。

これは「時間を巻き戻して青春をやり直す」というコンセプトのものが多く、例としては「二度目の夏、二度と会えない君」「リライフ」「ぼくは明日、昨日の君とデートする」などがある。

直接的な流行りは「君の名は。」の大ブームであると考えられているが、原作になっているものはそれ以前に発表されたものも少なくない。タイムリープもののブームでそういった原作が掘り起こされたとも考えられる。

ライトノベルとの接続

意外にもライトノベルライト文芸との親和性が高い。

「二度目の夏、二度と会えない君」「ハルチカ」「ホーンテッド・キャンパス」「ぼくは明日、昨日の君とデートする」などのライトノベル原作作品がキラキラ映画としてカテゴライズされている。

現在のライトノベルライト文芸においてはファンタジー要素をおさえた青春恋愛ものが局地的に流行しており、そういった作品が映画原作として注目されつつある。

 

キラキラ映画を監督のノウハウやスタッフインタビューに注目してみると、「いかにロマンティックなシーンを作れるか」を苦心した演出が目立つことに気づくだろう。

そう、キラキラ映画は決して手抜きではなく、むしろ匠が「ロマンティック」一点突破を目指して作り上げるピーキーで職人的なジャンルである。

だからせめて、予告編でキラキラ映画が流れてもゲンナリせずに「匠の技」を堪能する気分で眺めてみてほしい。