さっきまで命だったものが辺り一面に転がる「ローガン」

f:id:nyapoona:20170618225042j:plain

 

クズリちゃんがミュータントのょぅじょを守るために戦うアメコミ映画です。

 

 ミュータントが絶滅に瀕した世界。

自らの死に場所を求めるウルヴァリンはリムジンの運ちゃんをして、ボケきったプロフェッサーXを介護しながら生活していたが、追っ手をかいくぐって僅かに残った人造ミュータントの少女ローラを楽園「エデン」に送り届けてほしいという依頼に巻き込まれ、悲劇的な逃避行が始まる。

 

アメコミ映画ではあるが、ヒーロー映画ではない。

テイストはこれまでのマーベル映画とははっきり言ってトーンが違う。

どれくらい違うかというと「バットマン&ロビン」と「バットマンビギンズ」、「学校の怪談3」と「学校の怪談4」、「ゴジラ ファイナルウォーズ」と「シン・ゴジラ」くらい違う。

 

ヒーロー映画ではなく、アメコミを下地にしたマカロニウエスタンであり、ジャンル映画をアメコミの世界でやるという意図は「ウォッチメン」「ダークナイトライジング」「キャプテン・アメリカ ウィンターソルジャー」に近い。

つまるところ「ダークナイト」や「ウォッチメン」や「戦国大合戦」や「仮面ライダーアマゾンズ」などのように、「子供向けコンテンツを、別ジャンルで大人向けに描きなおした」という映画である。

シリーズ前作のデッドプール同様、スプラッター描写があるためにR指定となっているが、笑いとヒーロー映画の王道でコーティングしたデッドプールとは違い、ひたすらシリアスかつ痛々しいシーンが連続するため、デップーよりもグロさは増している。

そもそも、「老境に達したウルヴァリンが死に場所を求めて彷徨う中で出会った一人の少女のために戦う」というストーリーが「さえない青年がヒーローに変身し、人々の守護者としての自覚を持ってヴィランと戦う」というヒーローものの王道とは真逆をいっている。

アントマン」「ドクター・ストレンジ」などなんだかんだでヒーローもののテンプレをなぞる傾向にあったマーベル映画としては相当異色な内容だ。

また、アメコミ映画としてはほぼ反則のとあるギミックが仕掛けられている。最初はファンサービス程度かと思いきや、物語に密接に関係する要素であることが判明する。これには驚かされた。

 

ウルヴァリンがかかわった人がみな等しく死んでいくドライで殺伐とした雰囲気の中、物語は進み、だんだん追い詰められていくような息苦しさが映画全体を支配している。

うらびれたアメリカ南部でボケボケのプロフェッサーXをウルヴァリンが介護している……という時点で、「X-MEN アポカリプス」でのプロフェッサーの活躍を観てきた者としてはかなり辛くなる。

これまでX-MENシリーズはミュータントという社会に潜む異分子の迫害を描写してきたが、本作ではもう滅びかけているところから話がスタートする。

自動操縦トラックが走り、遺伝子操作された穀物のオートメーション化された大規模農業が行われ、プロムの学生が「USA!USA!」と叫びながらイキる近未来のアメリカに、ミュータントの居場所はない。

ミュータントは異分子どころか珍獣のように見られ、社会からはもうないものとして扱われつつある。

 

ウルヴァリンはご存じ手から長い爪をはやして戦うミュータントであるが、この作品ではその危険性が惜しげもなく披露されている。突き刺し・切断・首チョンパ。R指定で思う存分見せつけられる。MCUのヒーローのようにスマートには戦えないのである。

そういう「俺が生きるかお前が生きるか」というファイトスタイルをとっているがゆえに、ウルヴァリンは恰好悪くて、間違ったこともして、大人になりきれなくて、誰よりも孤独なのであるということが浮かび上がってくる。

アメコミのヒーローのようにはかっこよく生きられなかった彼が、何を選び取るのか。

それをずっしりと重く受け止める2時間となる。

 

こうしたヒーローものを大人向けのジャンル映画に引き直したという点で、「仮面ライダーアマゾンズ」に近いものがある。

アマゾンズも科学者の粗相で産まれた社会の異分子と人類の闘争を描いており、ローガン同様に残酷描写が連発される。

特撮ヒーローものを大人向けのジャンル映画に作り直すのは本当に卑怯だと思うのだが、やはり自分はこういうのにどうしようもなく弱かった。

大人のヒーローという語感に「ケッすかしやがって」と思う人にこそ、観てほしい。

すかす余裕なんてなく、ただひたすらに泥臭い直球を投げてくるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメコミ映画として反則のギミックとは、X-MENのアメコミが登場することである。

作中においてこれらのアメコミは「X-MENの実際の活躍を誇大にコミック化した」ものとして取り扱われる。だから、アメコミで全盛期のウルヴァリンの凄さを表現するとともに、「俺はそんなことはやってねえ」とウルヴァリンが自身のアメコミを読んでツッコミを入れるのである。

相当メタな構造なのだが、最後にこのアメコミには重大な意味が込められていることが判明する。

それは、アメコミの中にしか存在しないと思われていたミュータントの理想郷エデンが本当にあった(というより本当に作ってしまった)ということで、長年にわたるX-MENの暗闘が報われたという希望を表現している憎い演出になっている。