和製ジャングル映画「野火」

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野火のHulu配信が始まった記念です。

 ジャングル映画というジャンルがある。

これは要するに、「ジャングルで人間がいろいろな危険に冒され狂気に陥っていく」という話であり、「食人族」「プラトーン」「地獄の黙示録」、最近の作品であれば「グリーン・インフェルノ」「キングコング 髑髏島の巨神」などがそれに該当する。

自分の中では食人映画と戦争映画と怪獣映画が一直線上にあって、その尺度になっているものがジャングルである。

野火は大岡昇平の小説を基にした戦争映画である。

しかし、これは紛れもなく食人映画であり、ジャングル映画だろう。

衰弱した一等兵の目線を観客は借りて、戦時下のルソン島という名の、狂気が支配する緑の地獄へと旅立つことになる。

生い茂る植物の緑、そこをはい回る日本兵の茶色、爆発と流血と肉片の赤の対比が美しく、トリップしているかのような幻想的な描写もあって、自分があたかも狂っているかのように感じてしまう。

映画の内容は、生き延びるためにひたすらジャングルを走り回る。

戦争の状況や敵は断片的にしか描かれず、何がどうなっているのかは誰にもわからない。

ただし、犬、現地人、連合軍などの敵は確かにいて、静寂をついてこちらを殺しにかかってくる。それだけは確かだ。

生き残った日本軍も揃いにそろって嫌味なヤツばかりで、しかも戦況が悪化するなかだんだん狂気に侵されていく。

限られたリソースと状況下でサバイバルのために駆けずり回る、というストーリーはサバイバルホラーゲームをプレイしているようだ。

戦闘でのカメラのブレとか、ところどころ挿入されるPOVもそれっぽさに拍車をかけている。

戦争かつ人間食べ食べ映画なので、人が死んだり死体が出てきたりする。

見た目に反してそこまでグロさは感じず、綺麗な景色の映像で中和されていることもあってオエッとなることはなかった。

仮面ライダーアマゾンズ2期のほうがグロいと思う。

でも、怖い。

ホラー映画として成立している。

上品な映像やじっとりとした描写が、この映画を正調怪談として引き立てている。

人間としての尊厳がなくなった世界からひたひたと歩み寄ってくる狂気は、上映終了後も止まらない。