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DC映画久々のホームラン「レゴバットマン ザ・ムービー」

 

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世界で最もファンが「濃い」ものといえば、何なのか。

ガンダム、鉄道、アイドル、スターウォーズラノベ

バットマンもその一つに加えて良いだろう。

DCの屋台骨を70年近く支え続けた闇の騎士は、幾重ものリブートや実写化を経験してきた。

が、それゆえにファン層も厚く濃くなっていき、キャプテン・アメリカと対決ウォッチメンと競演隠し子がいた死ぬ生き返るなどセンセーショナルな超展開を繰り広げるバットマンの諸々に愛憎が入り混じるようになってくるのである。

それは有名になりすぎたノーランバッツに対する複雑な想いやBVSの熱い感想戦に窺うことができよう。

不幸なるかなDC映画は満塁ホームランか空振り三振しかしないと言われ、ゆえに作品を発表するたびに凄まじい波紋を広げる。

 

そのDCが、ついに、満塁ホームランを打った。

これが、レゴバットマンである。

 

 

映画オタクの間でマッドマックス並みに絶賛されているレゴバットマン

子供向け映画のように思えますが、蓋を開けてみたら実はバットマン厄介勢向け映画でした。

まず出だしからしてずるい。

ダークナイトっぽいBGMとともに物々しい雰囲気で「良い映画は黒から始まる」とバットマンがメタなナレーションを繰り出し、ジョーカー率いるヴィランが総集合して悪事をたくらみ、一斉にバットマンと戦いはじめる。

ちなみにここで出てくるヴィランは、ジョーカー、ハーレイクイン、キャットウーマン、ベイン、スケアクロウ、ペンギンといった映画出演の人気キャラのみならず、イレイザー、コンディメントキング、キラーモスなどのアメコミ読者でもなじみの薄いようなマイナーヴィランまで登場しており、この時点でただものではないと分かる。

 

バットモービルを乗り回し、ゴードンの娘バーバラに一目惚れし、ベタ甘恋愛映画の鑑賞が趣味で、アルフレッド相手にゴネまくるバットマンは、「眉間に皺を寄せてシリアスに闘う」という世間的なイメージとはかけ離れている。

DCを代表するヴィランジョーカーは、バットマンの最大の敵であろうとするためだけに悪事を働く。これはバットマンに対する恋慕に近い。

しかし、キャラクター描写はバットマン映画の中でも最も原作に寄っている。バットマンの「法律など知ったことか」という態度やコミュニケーション不全な性格、ジョーカーのバットマンへの執着が上手く落とし込まれていることに驚く。

 

なにより、バットマンのダーティさを暗くなりすぎないように、でもエッジのきいた方法で表現しているのが超絶技巧。

バットマンジョーカーを葬り去るため、ロビンを鉄砲玉代わりに使いスーパーマンから転送装置を強奪してジョーカーを異次元の収容所に送る計画を立てる。しかしこの行為は警察の思惑とは食い違い、ジョーカーを転送装置で飛ばしたところで逮捕されてしまう。

バットマンの魅力として、人間の法を超越してしまう・ともすればやっていることがヴィランと同じというところがあるが、今回のバットマンジョーカーを捕えるためにかなりえげつないことをやっている。

もちろん後で手痛いしっぺ返しを食らうことになるのだが、仲間の手をすべて振り払って警察やスーパーマンに唾を吐きかけて一人で暴走するレゴバットマンはまちがいなくダークヒーローである。

また、「疑似家族」がテーマになっていて、バットマン映画では鬼子であるロビン(ディック)とバーバラ(バットガール)との和解を軸にして、親を失い狂気と孤独の道を歩んでいたバットマンがロビン・バーバラ・アルフレッドとの疑似家族関係を構築していく様が表現される。

こういう疑似家族ものは大嫌いで(バケモノの子とか)、バットマンバットガールに惚れているという設定は「ええ……」と思ったのだが、最後は上手いところに落とし込んでいて良かった。安易にバットマンバットガールとロビンを父・母・子という関係に押し込まないところが息苦しさを軽減させていたと思う。

バットマンの疑似家族というテーマは原作にもあって、そちらはブルース、ロビン(ブルースとタリアの息子)、ディック、バットガール、バットウーマン、アルフレッド、レッドフード、キャットウーマンという大所帯になっている。

ブルースからバットマンを引き継いだディックが、ブルースの隠し子だったロビンを預かって育てていくというストーリーになっているので、気になった人はチェックしてもらいたい。

 

こまごまとしたマニアックな小ネタ、アメコミへのオマージュ、終盤のハイローみたいな熱い展開など、見どころ満載のアニメ。

 

全編がレゴで表現されているCGアニメ、というため敬遠されがちだが、直線的な材質のレゴだけで、高層ビルから汽車の蒸気まで質感たっぷりに表現した映像を見れば一気に引き込まれることだろう。

意味もなく怪しい蒸気がもくもくしているゴッサムシティのビル群やバットマンが登場する可変ロボも、オタク的フェティシズムにあふれている。

 模型やミニチュアに心ときめいた人ならば、実際に動くところを見れば一目惚れしてしまいそう。

 

BVSやダークナイト以外に、60年代バットマンやバートン版、ジョエバトなど歴代映画へのオマージュも豊富で、ジョエバトのパロディとして乳首スーツが出てきたときは噴き出してしまった。 

DC映画を見守ってきたオタクに送られた最高の贈り物で、「スーサイドスクワッドにはがっかりした」というようなアメコミ映画をこじらせた向きにはかなり救済される映画であった。

 

もし映画を見て気に入ったならば、原作アメコミにも手を出してみるといっそう味わい深くなります。

おすすめは『バットマン・アンド・サン』から始まる一連のモリソンバットマンシリーズと『リルゴッサム』です。

モリソンバットマンバットマンの隠し子であるロビンを巡るストーリーで、映画冒頭に登場したマイナーヴィランも多数出演。

リルゴッサムはデフォルメ版のコミカルなアメコミで、バットマンジョーカーが楽しくわいわい遊びまわるほのぼの日常系コミックです。

 

 

バットマン・アンド・サン

バットマン・アンド・サン

 

 

 

バットマン:リル・ゴッサム 1 (DCコミックス)

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